PENTAX ME super はMEをベースにマニュアル露出モードを追加して、シャッターの最高速を1/2000にグレードアップしたものである。
MXから始まるMシリーズは、オリンパスのOM-1に対抗して小型軽量化したものである。MXはOM-1と同様、機械制御布幕横走りフォーカルプレーンシャッターであった。MXに遅れほぼ同時期に発売されたMEは電子制御金属膜縦走りフォーカルプレーンシャッターになり、サイズは更に小さくなっている。
MEではトップカバーが金属製であったが、ME superでは樹脂製になっているのが惜しい。ペンタックスのロゴは、このME スーパーからAOCOだけでなくASAHIの刻印も無くなり、PENTAXだけになった。
マニュアル露出モードにおけるシャッター速度の変更はボタンによる。伝統的なダイヤル方式ではなくプッシュボタンによる操作は好悪の分かれるところであろう。しかし、操作をしてみるとダイヤル式よりも使いやすい。ファインダーから目を離さず、指一本で操作出来るのが良い。ただしダイヤル方式でも、キヤノンのAE-1のようにダイヤルを人差し指の腹で回すのも悪くない。
ME系の機体には持病がある。ミラーが戻らなくなったり、巻き上げてもシャッターがチャージされないという不具合だ。この機体も多分に漏れず症状が発生していたので、分解・修理を行った。
不具合の症状はミラーが上がったままになっている。原因はミラー駆動系に使われている部品の劣化によるものと思われる。分解には先ずセルフタイマーのレバーを外し、前面の貼り革を剥がすことからはじめる。セルフタイマーのネジは左ネジである。
巻き上げレバーの飾りネジをゴム板で押さえながら回して外し、その下のナットも外す。巻き上げレバーのネジは両方とも左ネジである。続いて巻き戻しクランクを外し、その下のナットを外すと感度調整ダイヤルが外れる。あとはトップカバー上面のネジを2本、ファインダー横のネジを2本、前面のネジ2本、計6本のネジを外すと上部カバーを外せる。
底板はネジ3本で外れる。巻き戻しボタンと、ワインダーのシンクロ接点カバーを無くさないように気を付ける。
ミラーボックスを外すためには、ワインダーのシンクロ接点のリード線を外さなければならない。
さらに、黄色丸印のリード線も外さなければならない。
シャッターボタン前面の接点基盤のリード線、左から白色、茶色、銅板、桃色の各ハンダを外す。
ミラーボックスを外したところ。ミラーボックスは6本のネジで固定されている。ファインダーの両脇に2本、前面に4本ある。ファインダーの両脇のネジを外す際には、ワッシャーが挟み込まれており、左右で厚さが異なるので注意が必要である。
ミラー復帰制御レバーの支持軸に使っているゴムリングが劣化して粘り、レバーの動きを阻害している。このため、ミラーが戻らなくなっていた。ネオプレンゴムの板をルーターで削りだして作った部品に交換した。
ちなみに、この個体は昭和55年6月13日のスタンプが押されていた。26年前に製造されたものであるようだ。
分解したついでにシャッター羽根のクリーニングも行うことにした。遮光板とシャッターチャージ指標を外し、シャッターユニットを固定しているユニット上部の2本のネジと、フィルム室側の1本のネジを外す。
分解前のシャッターユニット。
シャッター羽根をすべて外したシャッター制御ユニット。右側の軸周辺に樹脂ダンパーが劣化して溶け出した跡が見える。
分解したシャッター羽根と部品の全貌。
フォーカシングスクリーンとプリズムをクリーニングするためにフレキ基盤を外した。
このカメラを制御しているフレキ基盤のアップ。手前がフォトダイオードの基盤、右側がファインダー内表示のLED、左が本体とのコネクター、中央がLSIを搭載したメイン基盤である。右側の可変抵抗は、上が表示用LEDレベルの調整用、下がAUTO時のシャッター速度調整用である。いじってはいけない。
プリズムは無水エタノールで払拭し、スクリーンは中性洗剤で丸洗いした後、ブロワで水滴を飛ばしながら乾かした。
ME super はミラーのショックを吸収するためのエアダンパーを持っている。分解し点検したが特に問題はなかった。
ちなみに、Mシリーズでエアダンパーを搭載しているのはMXとこのME super だけである。