キヤノン Canonet の分解と徹底リペア

CANON Canonet 1961年発売

ジャンクで入手したCanonet(キヤノネット)のリペアを行った。入手したものは初代のキヤノネットで1961年に発売されており、私が生まれて間もなく世に出たものである。古さを感じさせず、すっきりしたデザインのカメラだ。シャッター速度優先式のAE機である。
※キヤノンのホームページによるとCanonetは「キャノネット」ではなく「キノネット」と読むのが正しい。

canonet02.jpg軍艦部上面

マニュアルでは露出計は機能しないが、シャッター速度はB、1/1~1/500まで、絞りは1.9~16まで任意に選ぶことが出来る。またバルブではタイマー(T)が使えるのでシャッターを開放することができる。単なるAE機ではない凝った仕様を持っている。
軍艦部上面にはレリーズボタン・アクセサリーシュー・撮影枚数表示しかない。

canonet03.jpg底面

巻き上げレバー、巻き戻しクランクは底面にある。上部に露出制御、底面に巻き上げ機構が組み込まれているので、自然にこのような配置になったのだろう。使いやすさを求めたものならば、以後の機種も同じになったはずなのに、次の機種からレバー類は上部に移っているからだ。
WEBを検索したり修理本を調べてみると、レンズを外し、シャッターや絞りにベンジンを注いで洗浄すれば治るらしい。簡単に治るだろうと取り組んだが簡単な作業ではなかった。
不具合の症状は次のとおり。
1.巻き上げが引っかかった感じがする
2.シャッターが切れない
3.ピント合わせの二重像が合わない
4.鏡胴ががたついている
5.シャッター設定リングが回りにくい
細かいことを挙げるときりがない。なにせ半世紀近く経ったものなのだから。
01.jpg上部カバーを外す。ネジ3本を外すだけだ。
02.jpg底部カバーを外すのは少々面倒だ。三脚取り付けネジ回りの貼り革を剥がすとネジが現れる。巻き戻しクランクは軸から外さずとも、クランクを引き上げれば根本のネジを外せる。巻き上げレバーはカニ目で外す。逆ネジはない。
03.jpg底面の巻き上げ機構を確認する。
04.jpg巻き上げの不良は無理矢理にレバー操作したことによって、ギヤの掛かりが外れてしまったことによる。
041.jpg巻き上げスプロケット軸のギヤは歯面が削れ、変形している。歯にマイナスドライバを当てて、小型ハンマーで叩いて変形を修正した。
05.jpgレンズボードを外した本体フレームの上部にはレバーがいっぱい。
06.jpgレンズを外そうとカニ目を見ると、既に分解された跡が残っている。あるだろうと思っていたが悪い予感がする。
07.jpgレンズ銘板を外すとセレンが現れる。
08.jpgセレンの配線は半田ゴテで外す。レンズを外し、その下の止め輪を回して外す。
09.jpgシャッター速度設定リングを外すとシャッター制御リングが現れる。リングとレバーの掛かりを記録しておく。
10.jpgシャッター制御リングを外すと、ガバナー、セルフタイマーの各ユニットが現れる。前面から見たシャッター羽根は綺麗に見えるが、内部は固着している。多くのサイトで紹介されている修理方法は、ここでベンジンを注ぎ洗浄するものだ。しかし、それでは奥に隠れた汚れまでは除去出来ないと判断し、シャッターユニットから絞りに至るまですべて分解することに方針変更した。
11.jpgレンズボードから鏡胴を外す。
12.jpgレンズの後玉を外すと絞り羽根が見える。油で固着している。
13.jpg鏡胴の奥のリングを外すと、ヘリコイドと鏡胴が分離する。
14.jpg再び鏡胴の前面から分解していく。
16.jpgガバナーとセルフタイマーユニットを外す。
17.jpgガバナーが動かない状態になっている。ベンジンで洗浄し、各軸に極少量の注油を行い、スムーズに動くようになった。シャッター羽根の前面からの洗浄ではガバナーまでは及ばないだろう。
171.jpgフィルム室側から矢印のネジを外し、シャッターと絞りユニットを分割する。ネジはすべて異なっているので、形状と位置を記録しておくこと。
18.jpgシャッター羽根の重なり方を記録しておく。特に、羽根とともに根本に小さな板を重ねた構造になっており、不用意に分解すると、どうなっていたのか分からなくなり収拾がつかなくなる。
19.jpgばらした羽根は無水アルコールで払拭する。
20.jpg絞り羽根も重なり方を記録しておく。汚れて動きが悪い状態であった。
21.jpg絞り羽根も無水アルコールで払拭する。絞りを動作させるリングも取り外して清掃する。このリングには油分が固着していたので念を入れてクリーニングした。

組立は分解の逆の手順で進めるのであるが、特にシャッター羽根の組立、シャッター制御ユニットと絞りユニットとの組み込みが難しい。先ずはシャッター羽根を組まずに組み込む練習を行って、コツをつかんでから組立を行った方が良い。また、むやみに注油をしないことも大事だ。
レンズシャッター式のカメラは分解調整が難しい。小さなバネの力で動作させているので、わずかな油分がシャッター羽根に付着しただけでも動作不良を起こすことがある。
22.jpg自動露出を制御するメータ周りのレバーやカムである。光量によってシャッター速度と絞りをどのように決めているか興味が湧く部分だ。
23.jpgメータを外すとリンクが現れる。写真下部がシャッター速度、上部が絞りを決めるレバーである。中央のレバーがシャッター速度と絞りを連動させている。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする