キヤノン ダイヤル 35(Canon DIAL 35)の分解・組立


以前から気になっていた キヤノン ダイヤル35(Canon DIAL 35)をYahoo!オークションで入手した。不動のジャンク品にもかかわらず5,000円也。ジャンク品として出品されていても動作するものは高値で取引されており,発売当時1万円程度のものがそれを越える金額で落札されている。完動品になると、開始額が2万円近くから、高いものでは5万円以上に設定されているものあって、出品者も強気だ。人気の要因を私見すると次の5点が挙げられる。
(1)ユニークなデザイン
(2)ゼンマイモータによる自動巻上/巻き戻し機能
(3)35mmハーフサイズ
(4)1/30~1/250までシャッター速度を任意に選択可能
(4)ゾーンフォーカスによるピント調整
(5)Cdsの測光で、セレンのように劣化がない
 
どんな仕組みになっているのか、興味津々で分解を開始した。
 
絞り羽根の洗浄
絞り羽根の動かなかった原因は絞り部根に付着した油だった。シャッターを完全に分解して、絞り羽根の洗浄を行った。写真は組立中。
 
シャッター羽の油
シャッターが動かなかったのもやはりシャッター羽根に付着した油が原因だった。レンズシャッター不動の原因は大抵これらしい。
 
シャッター組立完了
シャッターと絞り羽根の油をアルコールで払拭し、シャッターユニットの組立を完了したところ。
 
ガバナー
シャッターダイヤルを回してもシャッター速度が変化しなかった。原因はガバナーの動きが悪いことだった。これも分解して、軸部に極少の注油を行って再組立したところ、スムーズに動くようになった。
 
手裏剣カムの停止レバー
コマ送りがうまく出来ず、何コマも送ってしまう不具合があった。原因は、ラチェットのレバーに遮光用のモルトが溶けて粘着し、動きが悪くなっていたからだ。ここも分解して、腐食したモルトを取り除き、レバー類を油で洗浄、払拭して再組立した結果、コマ送り出来るようになった。ラチェットのカムは写真の青いプレートの裏側にあり、上下の停止レバーが交互に作動するようになっている。
 
ファインダーのクリーニング
DIAL 35 では絞り値、ゾーンフォーカスの指針値をそれぞれ確認できるようになっているが、埃などで煤けて見えなくなっていたのでクリーニングを行った。ハーフミラーとミラーは湯を含ませた不織布で拭いた。ファインダーのレンズはアルコールで拭いた。曇って見えにくかったファインダーが見えやすくなった。
 
対物レンズのクリーニング
綺麗にクリーニングした筈なのにファインダーを覗くとくもりが見える。対物側のレンズにくもりがあった。対物側のレンズは2枚のレンズが貼り合わされている。張り合わされた2枚のレンズの間に汚れがあるようだ。前面のレンズ周りの接着剤をカッターの刃で削り取るとレンズは容易に外せた。これで、ファインダーのクリーニングは完璧だ。
 
完成間近
あとは、Cdsのレンズとシャッターダイヤルを取り付けて完成。
 
とても興味深い構造のカメラだった。ゼンマイ動力を利用したカメラでは、リコーオートハーフが代表的な存在になるだろう。リコーオートハーフは巻き上げは自動だが、巻き戻しは手動である。ダイヤル35は、巻き上げだけでなく巻き戻しも自動になっているのがユニークだ。ただ、巻き戻すためにわざわざゼンマイを巻かなければならないところに、少々不合理を感じる。ゼンマイを巻く手間で、最初から手動で巻き上げればいいのに・・・と。
 
 

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